「アメリカの大学って、治安は大丈夫?」は、保護者が口に出しにくいけれど、いちばん気にしている質問かもしれません。ニュースでアメリカの事件を見ると、不安になるのは自然なことです。
最初に答えを書きます。アメリカの大学の安全は、「アメリカ」という国全体ではなく、大学と、その大学がある街によって大きく違います。連邦政府の学生支援を受けている大学は、毎年10月1日までに「年次安全報告書」で直近3年分の犯罪統計と安全の方針を公開しているので、志望校ごとに自分で確認できます。 そして渡米後は、大学の緊急アラートへの登録、Title IX(性差別・ハラスメント)の相談窓口の確認、在留届と家族の緊急連絡の計画の3つをそろえておきましょう。
この記事では、年次安全報告書の読み方、米国教育省のデータの調べ方、大学訪問で聞く質問、渡米後1週目の安全の設定、Title IX、NCAAの選手向けのルール、在留届と家族の連絡計画を整理します。内容は2026年10月時点の公式情報をもとにした一般的な情報です。本稿は法律や安全の助言ではなく、特定の大学の安全を保証するものではありません。 最新の数字と方針は、各大学の年次安全報告書、米国教育省、外務省で確認してください。
定義(答えの形): Clery Act(クレリー法)とは、連邦政府の学生支援を受けているアメリカの大学に、キャンパスの犯罪統計と安全の方針を毎年公開するよう求める連邦法です。大学は、毎年10月1日までに「年次安全報告書(Annual Security Report)」を出します。
「アメリカは危ない?」をデータで見る方法
答え:志望校の安全は、その大学の年次安全報告書と、米国教育省のデータで確認できます。数字は直近3年分の暦年ごとにまとめられていて、キャンパスの中、大学の寮、キャンパス外の大学の施設、キャンパスに接する公道などに分けて見られます。
年次安全報告書(ASR)とは
米国教育省のガイダンスによると、大学は毎年10月1日までに年次安全報告書を公開し、在学生と職員に配布する必要があります。キャンパスに寮がある大学は、同じ日までに「火災安全報告書」も出します。報告書には、直近3年分の犯罪統計と、安全に関する大学の方針が含まれます。
用語の早見表
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| Clery Act | 大学に犯罪統計と安全方針の公開を求める連邦法 |
| Annual Security Report(ASR) | 年次安全報告書。毎年10月1日までに公開 |
| Fire Safety Report | 寮がある大学の火災安全報告書 |
| Daily Crime Log | キャンパス警察などの犯罪の記録(該当する大学) |
| Timely Warning | 危険が続くおそれがある事件の注意喚起 |
| Emergency Notification | 差し迫った危険のときの緊急通知 |
報告書に含まれる犯罪の種類には、強盗、加重暴行、侵入盗、自動車盗、性犯罪、デートDV・ドメスティックバイオレンス・ストーカー、ヘイトクライム、お酒・薬物・武器の違反による逮捕や懲戒処分などがあります。2026〜27年版の連邦の手引きでは、ハジング(いじめ・しごき)の件数も挙げられています。
10分チェックリスト
- 「大学名+Annual Security Report 2026」で検索する
- キャンパス、寮、キャンパス周辺の区分ごとに数字を見る
- 米国教育省の「Campus Safety and Security」のサイト(ope.ed.gov/campussafety)で、同じ大学のデータを確認し、ほかの候補校とも比べる
- 寮の入館の仕組み(カードキー、夜間の入館ルール)を確認する
- 報告書の中の、緊急通知や夜間の送迎サービスの説明を読む
数字の読み方の注意
件数が多い大学が、必ずしも危険とは限りません。学生数が多い大学、都市部の大学、相談しやすい仕組みが整っていて報告が多い大学では、件数が多くなることがあります。数字だけで決めつけず、同じくらいの規模の大学どうしで比べ、報告書の文章も合わせて読みましょう。
数字以外に見るポイント
年次安全報告書には、数字のほかにも大切な情報が書かれています。たとえば、緊急時の通知の方法、避難の手順、寮に住む学生が行方不明になったときの連絡の手順(該当する大学)、懲戒の手続き、夜間の送迎サービスなどです。留学生にとっては、「何かあったとき、誰が、どうやって知らせてくれるのか」が分かることが、数字と同じくらい大切です。
大学のまわりの街の様子も見ておきましょう。キャンパスの外に住む上級生が多い大学では、アパートの周辺の安全も気になります。大学訪問のときに、夜のキャンパスや周辺を、在学生と一緒に歩いてみるのも一つの方法です。
大学訪問・オンライン面談で聞く安全の質問
答え:安全の様子は、数字だけでなく、選手の生活の流れの中で聞くとよく分かります。特に、遠征から帰る時間、夜の移動、何かあったときに最初に頼る人を聞いておきましょう。
"How do players get back to campus after late games or road trips?"
"Is there a campus escort or safe-ride service at night?"
"Who on staff do international players go to first if something happens?"
公式訪問の流れは 公式訪問の準備 を、保護者が一緒に行く場合は 保護者のキャンパス訪問 を参照してください。安全の質問と同じ面談で、ポジションごとの枠や出場機会も聞いておくと効率的です(GKの場合は ゴールキーパーのアメリカ大学サッカー留学)。
渡米後1週目にやる安全の設定
答え:渡米したら、最初の週に、大学の緊急アラートへの登録、キャンパス警察の電話番号の登録、夜の移動のルールの確認をしましょう。
- 緊急アラートに登録する:多くの大学には、メールやテキストメッセージで緊急情報を送る仕組みがあります。アメリカの電話番号があると、テキストで受け取りやすくなります(渡米1か月目のSSN・銀行・携帯)
- キャンパス警察の番号を携帯に入れる:番号は大学のサイトや年次安全報告書に載っています。緊急時は911です
- 夜の移動のルールを決める:遠征から遅く帰るときや夜道を歩くときの方法を、チームメイトと確認する
- 寮の入館ルールを守る:知らない人を一緒に入れない(1年目の住まい)
- 安全の説明会に出る:大学によっては、緊急時の対応の訓練や説明会があります
試合や遠征の日の安全
サッカー選手は、夜の試合や遠征で帰りが遅くなることがよくあります。チームのバスがキャンパスに着く時間、そこから寮までの帰り方、車を持っていない選手の移動の方法を、チームの先輩に聞いておきましょう。遠征先のホテルでも、部屋の番号を人に言わない、一人で夜に出歩かないといった基本を守りましょう。
Title IXとは:留学生にも関係する相談の窓口
答え:Title IX(タイトル・ナイン)は、連邦政府の支援を受ける教育機関での性別による差別を禁じる連邦法です。各大学にはTitle IXコーディネーターがいて、セクシャルハラスメントや性暴力などについて相談できます。留学生も対象です。
相談できること・サポート措置
Title IXの窓口では、性別による差別やハラスメント、性暴力などについて相談できます。大学は、相談した学生に「サポート措置(supportive measures)」を用意することがあります。たとえば、授業や寮の調整、スケジュールの変更などです。何が使えるかは大学やケースによって違うので、大学のTitle IXのページで確認しましょう。
規則は動いてきたが、窓口は変わらない
Title IXの規則は、ここ数年で何度も変わってきました。2024年に出された新しい規則は、2025年1月9日に連邦地裁の判決で全国的に無効とされ、教育省は2020年の規則にもとづいて運用してきました。そして2026年9月29日、教育省は2024年の規則を正式に撤回し、それ以前の規則の文言を元に戻す最終規則を公表しました。
細かいルールは変わっても、「大学に相談の窓口がある」ことは変わりません。英語での相談が不安な場合は、通訳や付き添いが可能かどうかを大学に聞いてみましょう。
NCAAの選手向けのルール
答え:NCAAは、性暴力の防止について、選手・コーチ・スタッフへの毎年の教育と、選手の毎年の自己申告を各大学に求めています。各大学のトップは、毎年それを守っていることを宣誓します。2026年の宣誓の締切は11月6日です。
NCAAの理事会の「Policy on Campus Sexual Violence」(最新の改訂は2024年4月25日)によると、大学は次のようなことを宣誓します。
- 運動部が、大学全体の性暴力防止の方針に組み込まれていること
- Title IXコーディネーターの名前と連絡先が、運動部の中ですぐ分かるようになっていること
- 選手、コーチ、スタッフが毎年、性暴力の防止について教育を受けていること
- 新入生、在学生、転校生の選手が毎年、Title IXの手続きでの処分や、暴力による有罪判決について自己申告していること
つまり、1年目の選手には、英語の研修やフォームが届きます。意味が分からないまま署名せず、アドバイザーやスタッフに確認してから署名しましょう。 お酒やハジングのルールは お酒・大麻・賭けのルール を参照してください。
サッカーと学位だけでなく、住む街と大学の安全まで含めて候補校を比べたい方は、相談の申し込み から選手の情報を送れます。安全を保証するものではありませんが、確認すべきことを一緒に整理します。
日本側の備え:在留届と家族の緊急連絡の計画
答え:アメリカに3か月以上住む日本人は、在留届を管轄の大使館・総領事館に出す義務があります。オンライン(ORRネット)なら、日本から引っ越す場合、現地に着く90日前から出せます。保護者が試合を見に行くなどの3か月未満の渡航は「たびレジ」に登録しましょう。
在留届
外務省のFAQによると、在留届は旅券法第16条にもとづいて、外国に住所を定めて3か月以上滞在する日本人に提出が義務付けられています。住所や連絡先が変わったら「変更届」、帰国するときは「帰国・転出届」を出します。管轄の大使館・総領事館は、ORRネットで住所を入力すると自動で選ばれます。在留届を出しておくと、緊急時に大使館・総領事館から連絡を受けやすくなります。基本は ホームシックとカルチャーショック でも触れています。
家族の連絡表(1枚)
| 連絡先 | 何のときに |
|---|---|
| 本人 | 毎日の様子 |
| コーチ | チームの予定、遠征 |
| アスレティックトレーナー | ケガ、体調 |
| 寮の担当者 | 住まいのトラブル |
| 留学生オフィス(DSO) | ビザ、在籍 |
| キャンパス警察 | 事件、緊急時 |
| 管轄の総領事館 | 日本人としての緊急時 |
| 保険会社の緊急窓口 | 病院、医療費 |
誰が誰に連絡するか、時差の中でいつ連絡するかを、家族で決めておきましょう。大学が保護者にどこまで伝えられるかは FERPAと保護者のアクセス を、18歳未満の場合は 18歳未満の留学:保護者と住まい を参照してください。
医療と保険
医療費や救急の利用については 留学生の健康保険 を確認してください。帰国のときの注意は 帰国とF-1 を参照してください。
保護者ができること・しないほうがいいこと
答え:保護者は、志望校の数字を一緒に見ることや、連絡表を作ることで手伝えます。一方で、毎晩の居場所の確認を強制したり、大学に直接何度も電話したりするのは避けましょう。
手伝えること
- 志望校の年次安全報告書を一緒に読む
- 家族の連絡表を作る
- 在留届とたびレジの登録を確認する
しないほうがいいこと
- 毎晩の居場所の確認を強制する
- 大学に直接、何度も電話する
- 本人の代わりに大学と話そうとする
本人が自分で判断し、大学のスタッフに相談できる力を育てることが、いちばんの安全につながります。
よくある誤解
- 「有名校や田舎の大学なら安全」:場所や規模だけでは決まりません。データで確認しましょう
- 「犯罪の件数が多い大学は危険」:規模や報告のしやすさで件数は変わります
- 「留学生はTitle IXの対象外」:留学生も相談できます
- 「何かあれば大学が日本の家族に必ず連絡する」:成年の学生の場合、本人の同意がないと連絡が来ないことが多いです
NextPitchの考え方
NextPitch は、有名校ではなく FIT で大学を選ぶことを大切にしています。サッカーの環境と学位だけでなく、4年間を安心して過ごせる街と大学かどうかも、FITの大切な要素です。名前ではなく、データと、選手の生活の流れで確かめましょう。アメリカ大学サッカー留学の全体像は カレッジハブ を参照してください。
FAQ
アメリカの大学の治安はどう調べる? 大学の年次安全報告書と、米国教育省の「Campus Safety and Security」のサイトで確認できます。同じくらいの規模の大学どうしで比べましょう。
年次安全報告書はいつ出る? 毎年10月1日までに公開されます。直近3年分の犯罪統計が入っています。
Title IXとは?留学生も使える? 教育機関での性別による差別を禁じる連邦法です。各大学にコーディネーターがいて、留学生も相談できます。
在留届は必要? アメリカに3か月以上住む日本人は、提出が義務付けられています。オンラインなら、現地に着く90日前から出せます。
保護者が日本からできることは? 志望校のデータを一緒に見ること、家族の連絡表を作ること、渡航時にたびレジに登録することです。
次の一手
住む街と大学の安全まで含めて、サッカーと学位を両立できる大学を一緒に考えたい方は、相談の申し込み へ。安全を保証するものではありませんが、確認すべきことを一緒に整理します。

