結論から言うと、「全額奨学金(フルスカラシップ)」でも、アメリカの税金がゼロになるとは限りません。授業料・必須の手数料・必須の教材にあたる部分は非課税ですが、寮費(room)・食費(board)・旅費にあたる部分は課税対象です。F-1ビザの留学生の場合、その課税部分には原則14%の源泉徴収がかかり、Form 1042-Sという書類で知らされます。そして日米租税条約の学生条項(第19条)は、日本など「アメリカの外」から送られるお金だけを免除する条文なので、アメリカの大学が出すスポーツ奨学金には使えません。この記事は2026年10月時点の一般的な情報整理であり、個別の税務・法律・移民(ビザ)のアドバイスではありません。実際の申告は、大学の留学生オフィス(DSO)や税の専門家に必ず確認してください。
アメリカ大学サッカー留学全体の流れはアメリカ大学サッカー留学の全体ガイドにまとめています。この記事では、奨学金のオファーを比べている家庭や、すでに入学した選手が「1月になって知らない書類が届いた」と慌てないように、税金の仕組みと毎年の書類を整理します。オファーは金額の大きさではなく、税金も含めた本当の負担が家計に合うかというFITで見てください。
3行でわかる答え
まずはこの3点を押さえてください。
| # | ポイント | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 授業料・必須の手数料・必須の教材の分は非課税、寮費・食費・旅費の分は課税 | 内国歳入法(IRC)第117条の「qualified scholarship」 |
| 2 | F-1留学生の課税部分は原則14%で源泉徴収され、Form 1042-Sで通知される | IRS(米国内国歳入庁)の源泉徴収の案内 |
| 3 | 日米租税条約第19条は、アメリカ国外からの送金だけが対象 | 条約本文とIRSの実務資料 |
非課税になる部分、課税される部分
奨学金は「何に使われるお金か」で課税か非課税かが分かれます。 スポーツ奨学金か学業奨学金かという名前は関係ありません。
| 奨学金の中身 | 税金の扱い(一般的なルール) |
|---|---|
| 授業料(tuition) | 非課税 |
| 在籍に必須の手数料(required fees) | 非課税 |
| 授業に必須の本・用品・機材 | 非課税 |
| 寮費(room) | 課税対象 |
| 食費(board、ミールプラン) | 課税対象 |
| 旅費・移動費 | 課税対象 |
| 生活費として受け取る現金(stipend など) | 一般的に課税対象(大学に確認) |
IRSは、非課税になるのは「qualified scholarship」(授業料・必須の手数料・必須の教材など)にあたる部分だけで、それ以外は課税対象になると説明しています。たとえば「フルスカラシップ」に寮費とミールプランが含まれていれば、その分が課税対象になります。
大学によって、奨学金のどの部分を寮費・食費に充てたかの計算方法が違います。具体的な金額は、大学の財務援助オフィスや学生会計(student accounts / bursar)に確認しましょう。
日米租税条約が使えない理由
日米租税条約の学生条項(第19条)は、学生が「その国の外から受け取るお金」だけを免除する条文です。 条約本文は、教育や生活のための支払いについて「その支払いがその国の外から行われる場合に限り」免除すると書いています。
つまり、アメリカで勉強する日本人学生にとって対象になるのは、日本の親からの仕送りのようにアメリカの外から来るお金です。アメリカの大学が出す奨学金は「アメリカの中から」のお金なので、第19条の対象になりません。IRSの国際課税の実務資料(practice unit)も、日米条約第19条を例に挙げて「日本からの支払いだけを免除し、アメリカ国内からの支払いには適用されず、内国歳入法で判断される」と説明しています。
国によっては、アメリカの奨学金も免除する条約があります。そのため、インターネット上の「条約で奨学金は非課税」という情報は、日本には当てはまらないことがあります。なお第20条は教員・研究者向けの条文で、学生向けではありません。
14%の源泉徴収とForm 1042-Sの読み方
F-1・J-1・M-1・Qビザの非居住者の学生は、奨学金の課税部分に対する源泉徴収の率が、通常の30%ではなく14%に下がります。 大学は課税部分の金額と源泉徴収した額をForm 1042-Sにまとめ、通常は年明けに学生へ送ります。
計算の例(Example)
IRSの留学生向け資料(Pub 4011)にある例をもとにすると、次のようになります。
| 項目 | 例の金額 |
|---|---|
| 授業料・手数料 | 25,000ドル(非課税) |
| 必須の本・用品・機材 | 1,000ドル(非課税) |
| 寮費・食費 | 9,000ドル(課税対象) |
| 1042-Sのbox 2(課税対象の金額) | 9,000ドル |
| 1042-Sのbox 10(源泉徴収額) | 1,260ドル(9,000ドルの14%) |
Form 1042-Sには非課税の部分は書かれず、課税対象の9,000ドルだけが載ります。奨学金を表す所得コードは「16」です。この1042-Sは、確定申告書(Form 1040-NR)を作るときに使います。
ただし、14%はあくまで「先に差し引かれる額」です。最終的な税額は1040-NRで計算するので、追加で払う場合も、一部が戻る場合もあります。大学によっては、源泉徴収分を学生の口座(student account)に請求する場合もあるので、請求書もよく確認しましょう。
毎年出す書類:8843、1040-NR、ITIN
F-1の学生がまず覚えておく書類は、Form 8843とForm 1040-NRの2つです。 課税される奨学金があってSSN(社会保障番号)がない場合は、ITINという納税者番号も必要になります。
| 書類 | 何のためか | 期限の目安(2026年分) |
|---|---|---|
| Form 8843 | 学生として「滞在日数を数えない」ことを示す | 1040-NRに添付。1040-NRを出さない場合は単独で郵送(1040-NRの期限まで) |
| Form 1040-NR | 非居住者の確定申告書 | 給与の源泉徴収がある場合は2027年4月15日、ない場合は2027年6月15日 |
| Form W-7(ITIN申請) | SSNがない人が納税者番号を取る | 必要になったら早めに |
それぞれのポイントです。
- Form 8843:IRSの案内では、学生などの「exempt individual」は、滞在日数を居住者判定に数えないことを示すためにForm 8843を出す必要があります。所得がなく確定申告が不要な場合でも、8843だけを期限までに郵送します。
- Form 1040-NR:IRSの説明では、F-1の学生が課税される奨学金を受け取ると、アメリカで事業を行っている(trade or business)と見なされます。2025年分の1040-NRの説明書では、給与の源泉徴収がある人は4月15日、ない人は6月15日が期限です。同じルールなら、2026年分はそれぞれ2027年4月15日と2027年6月15日になります(土日祝日の場合は翌営業日)。最新の説明書で必ず確認してください。
- ITIN:SSNを持たず、取得の資格もない人が納税者番号として使います。Form W-7の説明書には、課税される奨学金を受け取る学生向けの例外の扱いや、学生・研究者向けの申請理由(reason f)があります。キャンパス内のアルバイトなどでSSNを取れる場合は、ITINではなくSSNを使います。
1月〜6月のカレンダー(例)
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1月〜3月ごろ | 大学からForm 1042-S(アルバイトがあればW-2も)が届く |
| 2月〜3月 | 留学生オフィスが案内する税務ソフトや説明会を確認 |
| 4月15日まで | 給与の源泉徴収がある人は1040-NRと8843を提出 |
| 6月15日まで | 給与の源泉徴収がない人は1040-NR(または8843だけ)を提出 |
州の所得税は、州ごとにルールが違います。州の申告が必要かどうかは、大学のある州の案内と留学生オフィスに確認してください。
無料相談:奨学金のオファーを、税金も含めた本当の負担で読み比べるお手伝いをします。NextPitchの無料相談はこちら。
キャンパス内のアルバイト・CPT・OPT:所得税はかかるが、FICAは基本的にかからない
アメリカで5暦年未満のF-1の学生は、一般的に税法上の「非居住者」です。 IRSによると、USCISが認めた仕事(キャンパス内のアルバイト、CPT・OPTなどのプラクティカル・トレーニング)の給料には、社会保障税とメディケア税(あわせてFICA)がかかりません。ただし、所得税はかかります。
もし誤ってFICAが差し引かれていたら、まず雇い主に返金を頼みます。それでも戻らない場合に、Form 843と8316を使ってIRSに返金を求める流れです。
SSNの取り方や銀行口座の作り方は渡米1か月目のSSN・銀行・携帯の準備、CPT・OPTの全体像はOPT・CPTとキャリアの地図を参考にしてください。
家計とオファー比較に税金を入れる
オファーを比べるときは、奨学金の総額ではなく「寮費・食費の分にかかる税金」も差し引いて考えましょう。 同じ「フルスカラシップ」でも、寮費・食費の割合が大きい学校ほど課税対象の金額が増えます。
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 奨学金のうち、授業料・手数料・教材の分はいくらか | 非課税の部分 |
| 寮費・食費・旅費の分はいくらか | 課税対象の部分 |
| 源泉徴収は奨学金から引かれるのか、請求されるのか | 手元の資金計画に影響する |
| 州の所得税があるか | 学校の場所で変わる |
| I-20の財政証明にどう反映されるか | 留学生オフィスに確認 |
自己負担額の考え方は本当の自己負担額の計算、オファーの並べ方はスポーツ奨学金オファーの比べ方で詳しく書いています。
チェックリスト:入学前と1年目
- 奨学金の内訳(授業料・手数料・寮費・食費)を書面で受け取った
- 課税対象の部分と14%の源泉徴収の扱いを大学に確認した
- パスポート・I-20・入国日の記録をまとめて保管している
- SSNを取れるか(アルバイトの予定)を確認し、取れない場合のITINを確認した
- 1月以降に届く1042-S・W-2の受け取り方法(郵送・オンライン)を確認した
- 留学生オフィスの税金説明会の日程を確認した
誰に相談するか
税金の相談先は、大学の留学生オフィス、大学が提供する税務ソフト、税の専門家の3つが基本です。 多くの大学は、非居住者の申告に対応したオンラインの税務ソフトや説明会を案内しています。どのソフトを使うかは大学の案内に従ってください。
| 相談先 | 相談できること |
|---|---|
| 留学生オフィス(DSO) | 書類の種類、大学の案内、ITINの手続きの流れ |
| 大学の学生会計・給与担当 | 1042-S・W-2の内容、源泉徴収の額 |
| 大学のコンプライアンス | 奨学金や支給の条件(NCAAのルール) |
| 税の専門家 | 個別の申告内容、日本側の扱い |
なお、NIL(名前・肖像などを使った収入)は、税金とは別にF-1ビザでの就労ルールの問題もあります。NILを考えている場合は、先に留学生オフィスに相談してください。
よくある質問
Q. 所得がなくても書類を出す必要はありますか? A. IRSの案内では、F-1の学生は所得がなくても、滞在日数を数えないためにForm 8843を出す必要があります。確定申告(1040-NR)が不要な場合は、8843だけを期限までに郵送します。自分が対象かどうかは留学生オフィスに確認してください。
Q. 日本でも税金がかかりますか? A. 日本での扱いは、日本の税法上「居住者」か「非居住者」かなどで変わります。この記事では日本側の扱いは判断できないため、日本の税理士や国税庁の案内で確認してください。
Q. 親からの仕送りに税金はかかりますか? A. アメリカの税金について言えば、日米租税条約第19条は、学生が教育や生活のためにアメリカの外から受け取るお金を免除しています。IRSの資料も、日本からの支払いが対象だと説明しています。贈与など日本側の扱いは、日本の税の専門家に確認してください。
Q. 期限に遅れたらどうなりますか? A. 1040-NRの説明書では、期限を過ぎると利息や罰金がかかる場合があるとされています。また8843を期限内に出さないと、滞在日数を除外できない場合があります。気づいた時点ですぐに留学生オフィスと税の専門家に相談してください。
Q. 14%を引かれたら、それで終わりですか? A. いいえ。14%は先に差し引かれる額です。最終的な税額は1040-NRで計算するので、追加の支払いも還付もありえます。
入学後の授業と遠征の両立については、遠征で授業欠席:アメリカ大学サッカーの両立術にまとめています。
まとめ
- フルスカラシップでも、寮費・食費・旅費の分は課税対象。
- F-1の学生の課税部分は原則14%で源泉徴収され、Form 1042-S(所得コード16)で通知される。
- 日米租税条約第19条は、アメリカの外からのお金だけが対象。アメリカの大学の奨学金には使えない。
- 毎年、Form 8843と(必要に応じて)1040-NRを出す。2026年分の期限の目安は2027年4月15日または6月15日。
- 名前や総額ではなく、税金も含めた本当の負担で、家計に合う学校かどうかのFITを見る。
- 個別の申告は、留学生オフィスと税の専門家に必ず確認する。
無料相談:奨学金のオファーを、税金も含めた本当の負担で読み比べるお手伝いをします。NextPitchの無料相談はこちら。
出典(2026年10月時点で確認):IRS「Withholding on specific income」、IRS「Federal income tax withholding and reporting on other kinds of U.S. source income paid to nonresident aliens」、IRS Pub 4011(2026年分)、IRS Pub 519(2025年分)、Instructions for Form 8843(2025年分)、Instructions for Form 1040-NR(2025年分)、Instructions for Form W-7、IRS「Foreign student liability for Social Security and Medicare taxes」、日米租税条約(2003年11月6日署名)第19条、IRS International Practice Unit(学生条項)。

