アメリカ大学サッカー留学では、高校の成績書類を「誰に出すか」で、求められる形が変わります。大学の入学審査、NCAA Eligibility Center、そして NAIA・NJCAA が使う評価機関 InCred の3か所は、それぞれ別のルールで成績を確認します。学校が発行する英文成績証明書が1枚あれば全部済む、とは限りません。先に「どこが・何を・どの形で」求めているかを一覧にしておくと、出願期限の直前に慌てずに済みます。
この記事の範囲は、高校(NCAA の場合は中学3年を含む)の成績書類です。Eligibility Center のアカウント作成や登録の時期は Eligibility Centerの登録タイムライン に、英語試験は Eligibility CenterとTOEFL・Duolingo にまとめているので、本稿では繰り返しません。入学後の GPA や単位の話は 入学後のGPA・学業資格 を参照してください。情報は2026年10月時点で各団体・機関の公式ページ等を確認したもので、料金や手続きは変わります。手続きの前に必ず各公式ページと、志望校の入学担当・コンプライアンス担当で確認してください。法律の助言ではありません。
定義(答えの形): アメリカ大学サッカー留学では、成績証明書を①大学の入学審査、②NCAA Eligibility Center、③NAIA/NJCAA(評価機関 InCred)の3か所が、それぞれ別の基準で確認します。日本の5段階評定をアメリカの4.0 GPA に変える公式の一律換算式はなく、換算は大学や評価機関が行います。
結論:成績書類は「3つの窓口」それぞれのルールで用意する
答えから書きます。成績書類の準備は、次の三つを分けて考えるとすっきりします。
- 大学の入学審査:大学ごとにルールが違います。高校発行の英文成績証明書で受け付ける大学もあれば、WES や ECE などの評価機関のレポートを指定する大学もあります。
- NCAA Eligibility Center(D1・D2):中学3年にあたる学年から高3までの日本語の公式成績証明書と、認証を受けた逐語の英訳が基本です。
- NAIA・NJCAA:留学生は評価機関 InCred の評価が必要です(NAIA は必須、NJCAA も InCred を評価提供元としています)。
三つは別々の窓口なので、1か所に出したから他も済む、とは考えないでください。志望校がどの協会に属するかで、必要な書類の組み合わせが変わります。協会ごとの違いそのものは NCAA D1・D2・D3・NAIA・JUCOの違い にまとめています。
3つの窓口が求めるもの(比較表)
答え:同じ「成績証明書」でも、対象学年・翻訳の条件・送り手・評価の要否が窓口ごとに違います。下の表は2026年10月時点の公開情報に基づく整理で、個別の条件は必ず各窓口で確認してください。
| 項目 | 大学の入学審査 | NCAA Eligibility Center | NAIA・NJCAA(InCred) |
|---|---|---|---|
| 対象学年 | 大学ごと(多くは高校3年間) | 9年目(日本では中3)以降 | 高校の記録(国ごとの必要書類リストで確認) |
| 日本語原本 | 大学ごと | 必要(公式の成績証明書) | 国別リストに従う |
| 翻訳の条件 | 大学ごと | 認証を受けた逐語の英訳 | 逐語の英訳(認証は不要と案内) |
| 誰が送るか | 大学ごと(高校から厳封・直送が多い) | 学校などの発行元。進学先のコンプライアンスによるアップロードが推奨 | 本人が InCred にアップロード(電子発行の書類は発行元から) |
| 評価機関 | WES・ECE などを指定する大学もある | 不要(EC が自ら審査) | InCred の評価が必須(NAIA) |
| 費用の目安 | 評価機関を使えば数百ドル程度 | 登録料は別記事参照 | InCred 評価料+NAIA 登録料 |
| 最終版 | 卒業後に最終成績を求められることが多い | 卒業後の最終版と卒業の証明 | 卒業後の最終版 |
出願ポータルの使い方は Common Appの出願 にあります。
NCAA:中学3年からの公式成績証明書+認証を受けた逐語英訳
答え:NCAA の公式ページ(International Student-Athletes)では、D1・D2 を目指す留学生について、学校から「9年目以降の最終の公式成績証明書(母国語)」と「認証を受けた逐語の英訳」、そして卒業の証明を提出するよう案内しています。
対象は「year nine and up」=日本では中3から
NCAA は「9年目の学年以降」の成績を求めています。日本の学制(小学校6年・中学校3年・高校3年)では、9年目は中学3年にあたります。つまり、高校の成績証明書だけでなく、中学3年の成績書類が必要になる点に注意してください。中学の書類は中学校に依頼する必要があり、卒業から時間がたつと発行に時間がかかることもあります。日本の国別ページ(Japan)の内容は、提出前に Eligibility Center の最新情報で確認してください。
翻訳の条件
NCAA のページでは、英語以外の言語で発行された成績書類には、完全な逐語(word-for-word)の、認証を受けた英訳(certified English translation)が必要とされています。また、公式書類は母国語で提出することになっています。翻訳者の資格や証明の形式など細かな条件は、NCAA の国際ガイドや Eligibility Center で確認してください。本人や家族による翻訳を前提にしないのが安全です。
学校発行の英文成績証明書は「翻訳」の代わりになる?
日本の高校には、学校が英文の成績証明書を発行してくれるところがあります。ただし、それが NCAA の求める「認証を受けた逐語の英訳」の代わりとして扱われるかどうかは、この記事では判断できません。必ず NCAA Eligibility Center、または進学予定校のアスレチック部コンプライアンス担当に確認してから準備してください。
送り方
NCAA のページでは、進学先の NCAA 加盟校がアカウントに直接アップロードする方法が推奨されています。メールでの提出は、学校・教育行政機関・発行機関・翻訳サービス(翻訳のみ)に限られ、生徒本人がメールで送った成績書類や翻訳は受け付けられないと明記されています。提出した書類は返却されません。学校によっては成績の評価基準(grading scale)を求められることもあります。
コアGPAの基準
NCAA の公式ページでは、D1 はコア科目 GPA 2.3 以上、D2 は 2.2 以上が基準とされています。この GPA は、各国の成績を Eligibility Center 側の基準で読み替えて計算されるもので、家族が自分で換算した数字が使われるわけではありません。D3 は各大学が学業基準を定めます。
NAIA・NJCAA:InCredの評価が必要
答え:NAIA では、留学生は NAIA Eligibility Center への登録に加えて、評価機関 InCred の評価を購入することが必須です。NJCAA も InCred を留学生の評価提供元として契約を更新しており、同じ評価レポートを NAIA の資格審査にも使えると NAIA は説明しています。
NAIAの登録料と提出時期
NAIA の国際生向けガイドでは、国際生の登録料は1回限り・返金なしで、2025年9月15日から170ドルと案内されています。秋入学の場合、必要な学業書類はすべて、資格を得たい学期の開始の少なくとも2か月前までに提出するよう勧めています。日本の学校が夏休みに入る前に動くのが安全です。
翻訳の条件はNCAAと違う
NAIA のガイドは、翻訳は文字どおりの英訳(literal translation)であればよく、認証・公証・学校印は不要としています。InCred も、翻訳は高額な認証翻訳会社に頼む必要はなく、両言語に堪能な人による正確な逐語訳であればよい、ただし不正確な場合は認証翻訳を求めることがある、と説明しています。NCAA とルールが違うので、両方を受ける可能性がある選手は、厳しいほうの NCAA 基準で用意しておくと二度手間を避けやすくなります。
InCredの種類と価格(例)
InCred の価格は、2026年10月時点で公開情報に食い違いがあります。
| 種類 | InCred の学生向けページ | NAIA の資料(2026年10月から) |
|---|---|---|
| Basic High School(高校のみ) | 95ドル | 120ドル |
| Course-by-Course | 190ドル | 195ドル(高校のみ)/225ドル(大学を含む) |
NAIA が2026年9月に公開した資料では、2026年10月から新価格になると案内されています。どちらも例として示すもので、注文時に InCred の公式サイトで最新の価格を確認してください。InCred の学生向けページでは、特急サービス(5営業日75ドル、2営業日150ドル)や、書類がそろってから通常10営業日程度で完了する目安も案内されています。
大学の入学審査:学校ごとに違う
答え:大学の入学審査は、大学ごとにルールが違います。志望校の「International Applicants(留学生の出願)」ページに、成績書類の形式が書かれているので、そこを読むのが最初の一歩です。
よくある3つのパターン
- 高校が発行する英文成績証明書を、厳封または学校からの直送で受け付ける
- 日本語の原本と英訳のセットを求める
- NACES 加盟の評価機関(WES や ECE など)による評価レポートを指定する
WES(World Education Services)
WES の料金ページでは、Course-by-Course 評価が ICAP 付きで239ドル、Basic で186ドルなどと掲載されており、配送料などは別です(2026年1月から3%値上げと案内)。WES は書類の翻訳を行わないため、英訳を別に用意する必要があります。評価対象やレポートの種類が高校の成績に対応しているかは、WES と志望校の両方で確認してください。
ECE(Educational Credential Evaluators)
ECE の料金ページでは、Course by Course が199ドル、デジタル送付などを含めた総額の例が281ドルと掲載されています。85ドルで英訳の提出が不要になる Translation Waiver というオプションもあります(翻訳は評価のためだけに使われ、本人や大学には渡されません)。
どの機関かは大学が決める
WES と ECE のどちらがよいかは、家族が選ぶものではなく、大学が指定するものです。指定がない場合は、入学担当に英語で一行聞くのが確実です。
"Do you accept a school-issued English transcript from Japan, or do you require a course-by-course evaluation from a NACES member such as WES or ECE?"
評価機関に二重に依頼して費用がかさむケースもあるので、志望校すべての指定を先に確認してから注文しましょう。
志望校ごとに必要な成績書類と提出順を一緒に整理したい方は、相談の申し込み から状況を送れます。合格や資格認定の結果を約束するものではありません。
評定平均とGPA換算の正直な話
答え:日本の5段階評定をアメリカの4.0 GPA に変える、公式の一律換算式はありません。換算するのは、大学や評価機関、NCAA Eligibility Center です。
「評定平均マイナス1」は目安の俗説
「評定平均から1を引けば GPA」といった言い方を聞くことがありますが、これは公式のルールではありません。評価機関や大学は、科目ごとの成績や学校の評価基準をもとに換算するため、同じ評定平均でも結果が変わることがあります。
コーチには元の数字で伝える
リクルートの段階でコーチに成績を伝えるときは、自分で換算した数字ではなく、「5段階評定で平均◯◯(学校の評価基準つき)」と元の数字で伝えるのが誠実です。換算値はあとで評価機関や大学が出すものとして説明しましょう。名前ではなく FIT で大学を選ぶうえでも、正確な成績情報は相手との信頼の土台になります。
高校事務に頼むものリスト(コピー用)
答え:高校や中学校の事務室には、一度にまとめて依頼すると手間が減ります。発行に1〜2週間かかる学校もあるので、余裕を持って頼みましょう。
- 英文成績証明書(必要な学年分。NCAA 用には中3分を中学校に依頼)
- 日本語の成績証明書(NCAA 用の原本として)
- 英文の卒業証明書、または卒業見込証明書
- 成績の評価基準(5段階評定の説明、grading scale)
- 厳封の要否と必要な部数
- 発行にかかる日数と手数料
- 卒業後に最終成績をもう一度発行してもらえるか
先生に頼むときは、「アメリカの大学と NCAA に提出するため」と用途を伝えると、必要な形式を一緒に考えてもらいやすくなります。
費用と時間のめやす(例)
答え:費用は「翻訳費」「評価機関の料金」「登録料」「送料」の組み合わせで決まります。数字はすべて2026年10月時点の公開情報にもとづく例で、1ドル≒150円で換算した目安です。
| 項目 | 例 | 円換算の目安 |
|---|---|---|
| 翻訳費 | 翻訳者・ページ数で変動(見積もりを取る) | ― |
| InCred | 95〜195ドル(上記の表を参照、注文時に確認) | 約1.4万〜2.9万円 |
| WES | 186〜239ドル+配送料 | 約2.8万〜3.6万円+α |
| ECE | 199ドル(総額例281ドル) | 約3万〜4.2万円 |
| NAIA 登録料 | 170ドル | 約2.6万円 |
時間は、学校での発行(1〜2週間の例)、翻訳、評価機関の審査(InCred は書類がそろってから通常10営業日程度の目安)を合わせて、1か月以上見ておくと安心です。家計全体の見方は 総額の読み方 を参照してください。
よくあるつまずき5つ
答え:成績書類のトラブルの多くは、事前に知っていれば避けられるものです。
- 中3の成績を出し忘れる:NCAA は9年目以降を求めるため、中学校への依頼が必要です。
- 本人や家族が翻訳してしまう:NCAA では認証を受けた英訳が必要です。
- 生徒本人が書類をメールで送る:NCAA は生徒が送った成績書類を受け付けません。
- 卒業後の最終版を出し忘れる:卒業後に最終成績と卒業の証明が必要になります。
- 評価機関に二重に依頼する:志望校の指定を先に確認しないと、費用が重なります。
NextPitchの考え方
NextPitch は、有名校ではなく FIT を軸に大学選びを考えます。成績書類で審査が遅れることは、準備で避けられる失敗です。志望校の候補が決まったら、学校ごとに必要な書類と提出順を一覧にするところから始めるのがおすすめです。アメリカ大学サッカー留学の全体像は カレッジハブ にまとめています。
入学が決まったあとの生活の立ち上げについては、渡米後1か月の手続き(SSN・銀行口座・携帯) で整理しています。
FAQ
学校の英文成績証明書だけで出願できる? 大学の入学審査では受け付ける大学もありますが、大学ごとに違います。NCAA については、学校発行の英文成績証明書が認証翻訳の代わりになるかを、Eligibility Center か進学予定校のコンプライアンス担当に必ず確認してください。
翻訳は誰に頼む?自分で訳していい? NCAA では認証を受けた逐語の英訳が必要です。NAIA と InCred は認証を求めていませんが、正確な逐語訳が前提です。両方の可能性があるなら NCAA 基準で用意すると安全です。
中学の成績も必要? NCAA を目指すなら、9年目にあたる中学3年の成績が必要です。中学校に依頼してください。
WESとECE、どっちがいい? 家族が選ぶのではなく、大学が指定します。志望校の留学生向け出願ページで確認してください。
InCredはNCAAでも使える? NCAA は Eligibility Center が自ら審査する仕組みです。InCred の評価が NCAA で使えるかは、Eligibility Center に確認してください。
評定平均4.0はGPAいくつ? 公式の一律換算式はありません。科目ごとの成績や学校の評価基準をもとに、大学や評価機関が換算します。
次の一手
志望校ごとに必要な成績書類と提出順を一緒に整理したい方は 相談の申し込み へ。合格・資格認定・奨学金の結果を約束するものではありませんが、期限に間に合う準備の順番を一緒に考えます。

