「アメリカの大学では、選手が名前でお金をもらえるって本当?」「留学生でもNILはできるの?」ニュースでNILという言葉を見て、こう聞かれる保護者や選手が増えています。
最初に答えを書きます。アメリカの大学スポーツのルールでは、NIL(名前・肖像の活用)による収入は認められています。ただし、F-1ビザの留学生は、アメリカの中で働いてお金をもらうことが大きく制限されています。2026年10月時点でも、国(SEVP/国土安全保障省)から留学生のNILについての正式な指針は出ていません。 そのため、多くの大学の国際オフィスは「アメリカ国内でのお金をもらうNIL活動は、ビザのルールに反するおそれがある」と案内しています。学費や生活費の計画にNILの収入を入れるのはやめましょう。
この記事では、NILの基本、F-1ビザで問題になる理由、比較的リスクが低い収入と高い収入の違い、レベニューシェア(大学から選手への直接の支払い)、D1の報告システム「NIL Go」、契約の前に大学に聞くことを整理します。内容は2026年10月時点の公開情報をもとにした一般的な情報です。本稿は法律・移民・税務の助言ではありません。 実際の判断は、必ず大学の国際オフィス(DSO)とコンプライアンス担当、必要なら移民法の専門家に確認してください。
定義(答えの形): NILとは Name, Image and Likeness の略で、選手の名前・写真や映像・肖像を、企業の広告やSNSの投稿、イベントなどに使ってもらい、その対価を受け取ることです。NCAAでは2021年7月から認められています。
NILとは:大学スポーツで何が変わったか
答え:2021年7月から、NCAAの選手は名前や肖像を使った収入を得られるようになりました。NAIAは2020年にいち早く認め、短大のNJCAAも条件つきで認めています。どの協会でも、学校のルールと州の法律が上にかかります。
| 協会 | NILの扱い(概要) | 気をつけること |
|---|---|---|
| NCAA D1 | 認められている。第三者からの合計600ドル以上の契約は「NIL Go」に報告が必要 | 報告しないと出場資格に影響する |
| NCAA D2・D3 | 認められている | 学校ごとの届け出ルールを確認 |
| NAIA | 2020年に最初に認めた協会 | 学校や大学の立場に関わる契約は、学校に書面で知らせる |
| NJCAA(短大) | 第三者からのNILは条件つきで認められている | 大学の関係者や後援者からの直接の支払い、成績に連動した支払いは禁止 |
※上の表は協会のルールの概要です。どの協会でも、F-1ビザの制限は別にかかります。
留学生(F-1)のNILが難しい理由
答え:F-1ビザは「勉強するためのビザ」です。アメリカの中で働けるのは、学内での仕事(授業期間中は週20時間まで)、CPT、OPTなど、決められた場合だけです。NILの活動の多くは、このどれにも当てはまりにくいと説明されています。
- 学内の仕事:大学の中での仕事。授業期間中は週20時間まで
- CPT:在学中に、専攻と直接つながる実習として行う仕事
- OPT:主に卒業後に、専攻に関係する分野で働く制度
企業の広告に出る、SNSで商品を紹介してお金をもらう、イベントに出て謝礼を受け取る、といったNILの活動は、「アメリカの中で働いて対価を得る」と見なされるおそれがあります。フロリダ大学の国際オフィスは、NILの活動が働く許可の対象になるのはまれで、F-1の学生がアメリカ国内で行うNIL活動は移民法に反する可能性が高い、と案内しています。
SEVPは2021年7月に「留学生のNILについて検討を続けている」というお知らせを出しましたが、2026年10月時点で、その後の正式な指針は出ていません。2026年9月の法律事務所の解説でも、「決まった指針はなく、専門家の間でも意見が分かれている」とされています。
学外での働き方やCPT・OPTの全体は OPT・CPTとキャリア を参照してください。
リスクが比較的低い収入、高い収入
答え:法律事務所などの解説では、「本人が何かをしなくても入ってくる収入」(ライセンス料など)は比較的リスクが低く、「アメリカの中で本人が何かをして受け取る収入」はリスクが高いと整理されています。ただし、どれも国が正式に認めたものではありません。
| 収入の種類 | 例 | リスクの目安 | 先に確認すること |
|---|---|---|---|
| ライセンス料・ロイヤリティ | ユニフォームやグッズの売り上げに応じたグループ・ライセンス料 | 比較的低いとされる | 本当に本人の活動がない契約か |
| アメリカ国外での活動 | 日本に帰ったときの撮影やイベント | 米国の就労制限の外とする解説がある | 日本の税金、学校とNIL Goのルール |
| アメリカ国内での活動 | 広告出演、SNSでの宣伝、サイン会、キャンプでの指導 | 高い | 国際オフィスと移民法の専門家 |
| 大学からの直接の支払い(レベニューシェア) | 学校から選手への分配 | まだ答えが出ていない | 支払いの性質の書面、国際オフィス |
※「比較的低い」は、法律事務所の解説での整理です。国の正式な判断ではありません。
注意したいのは、名前だけ「ライセンス契約」にして、実際には本人が投稿やイベントをする契約です。法律事務所の解説では、こうした契約は移民のルールでもNCAAのルールでも通用しないと指摘されています。
レベニューシェアは留学生も受け取れる?
答え:まだ答えが出ていません。House訴訟の和解に参加したD1の大学は、選手に直接お金を払えるようになりました(2025-26年度は1校あたり約2,050万ドルが上限)。しかし、学校から払われ、スポーツの成績とつながったお金は「給料」に近いと見なされるおそれがあり、留学生の扱いは専門家の間でも意見が分かれています。
- 大学によって、留学生への支払いの扱いが違う
- 分配の多くはフットボールやバスケットボールに向かうとされ、サッカーにどれだけ回るかは学校次第
- 成績に応じたボーナスがついた契約は、リスクが高くなるという指摘がある
ロスターの上限や奨学金の変化と合わせた全体像は 2026年の大学サッカーの制度変化 を参照してください。奨学金(学費の支援)とNIL・レベニューシェア(対価)は別の話です。混ぜずに考えましょう。
D1の報告システム「NIL Go」
答え:D1の選手は、第三者(大学以外の企業や個人)からのNIL契約で、合計が600ドル以上になるものを、契約から5営業日以内に「NIL Go」に報告する必要があります。同じ相手との小さな契約も合計で数えます。報告しないと、出場資格を失うおそれがあります。
- 高校から入学する選手や、D1に移ってくる選手には、14日までの例外がある場合がある
- 契約書などの書面を出し、内容(相手、やること、期間、金額)を正しく入力する
- お金だけでなく、物やサービス(車のリース、ジムの会員など)も対価に含まれる
ここで大事なのは、NIL Goで認められても、F-1ビザの問題が解決するわけではないということです。NIL Goは大学スポーツのルールの確認で、ビザの判断ではありません。
アメリカ大学サッカー留学を、NILに頼らない学費と奨学金の計画で考えたい方は、相談の申し込み から選手の情報を送れます。合格や奨学金を約束するものではありませんが、確認すべきことを一緒に整理します。
契約の前に大学に聞く5つの質問
答え:お金や物をもらう話が出たら、サインする前に、国際オフィス(DSO)と運動部のコンプライアンス担当に相談しましょう。コーチはチームの専門家ですが、ビザの最終的な判断をする人ではありません。
- "Does your international student office have written guidance on NIL for F-1 students?"(F-1学生のNILについて、書面の案内はありますか?)
- "Have F-1 athletes at your school received NIL or revenue-sharing payments? How were they structured?"(この大学で、F-1の選手がNILやレベニューシェアを受け取った例はありますか?)
- "Who reviews an NIL contract before I sign — compliance, the international office, or both?"(サインの前に、誰が契約を確認しますか?)
- "Can I use the school's name, marks, uniform or game video in my own posts?"(大学の名前、マーク、ユニフォーム、試合の映像を自分の投稿に使えますか?)
- "Who can help me understand the tax side?"(税金について、誰に相談できますか?)
良い答えは「手続き」の話です。「来てから考えればいい」「みんなやっている」だけなら、NILを計画から外しておきましょう。
SNSは「お金をもらわない発信」から
答え:お金をもらわずに、自分のプレーや大学生活を発信することは、NILの問題とは別です。ただし、チームや大学のSNSのルール、大学のマークや試合の映像の使い方には決まりがあります。
SNSは、コーチや採用担当者にも見られます。リクルートの段階からの注意点は SNSの使い方とリクルート を参照してください。また、多くの学校や協会では、アルコール、たばこ、大麻、ギャンブルなどの企業との契約が禁止されています(アルコール・大麻・賭けのルール)。
日本にいる間の活動は?
答え:法律事務所の解説では、アメリカの就労制限はアメリカの中での仕事に関するものなので、帰国中に日本で行う活動は一般にその外だと説明されています。ただし、お金の受け取りだけを外国にしても意味はなく、活動そのものが日本で行われる必要があります。
- 日本での収入には、日本の税金のルールがかかる
- D1なら、日本での契約もNIL Goへの報告が必要になる可能性がある
- 大学のマークや試合の映像を使うときは、学校のルールがかかる
帰国の時期とビザの書類は 一時帰国とF-1の注意点 を参照してください。
入学前の選手が気をつけること
答え:高校生の段階では、NILよりも「アマチュア資格」に気をつけましょう。プロのチームとの契約や、代理人との契約は、入学後の出場資格に影響することがあります。
入学前の報酬や代理人の扱いは アマチュア資格の確認 を、プロを目指す道は 大学サッカーからプロへ を参照してください。8月入学か1月入学かで迷っている場合は アメリカ大学の1月入学 も参考にしてください。F-1ビザの面接で「アメリカでお金を稼ぎたい」と話すのも避けましょう(F-1ビザ面接)。
保護者ができること
答え:家計の表では、NILの収入を「ゼロ」にして計算しましょう。それでも4年間の学費と生活費が成り立つかを先に確認するのが大切です。
- 大学の費用 − 奨学金 − 学業の奨学金 = 家族の負担、をNILなしで計算する(本当の自己負担)
- 「NILで学費がまかなえる」と言う業者や大人には注意する
- お金の話が出たら、サインの前に大学に相談する、という家族のルールを決めておく
奨学金の考え方は 大学サッカーの奨学金の現実 を参照してください。
よくある誤解
- 「アメリカの大学選手はみんなNILで稼いでいる」:金額は競技や選手によって大きく違い、留学生には別の制限があります
- 「NIL Goで認められたらビザも大丈夫」:NIL Goは大学スポーツのルールの確認で、ビザの判断ではありません
- 「他の留学生がやっているから大丈夫」:大学、年、活動の内容によって違います
- 「SNSの投稿は全部NIL」:お金や物をもらわない発信は、NILの対価とは別です
- 「奨学金とNILは同じ」:奨学金は学費の支援、NILは名前や肖像の対価です
NextPitchの考え方
NextPitch は、有名校ではなく FIT で大学を選ぶことを大切にしています。NILは「あればうれしい」もので、留学の計画の柱ではありません。大切なのは、競技のレベル、学位、4年間の費用が、NILなしで成り立つことです。アメリカ大学サッカー留学の全体像は カレッジハブ を参照してください。
FAQ
留学生はNILで稼げる? 大学スポーツのルールでは認められていますが、F-1ビザではアメリカ国内で働くことが大きく制限されています。2026年10月時点で国の正式な指針はなく、多くの大学がアメリカ国内での有償のNIL活動に注意するよう案内しています。
NILで学費を払える? 計画に入れるのはやめましょう。学費は、奨学金と家族の資金で成り立つかを先に確かめてください。
ユニフォームの売り上げなどのライセンス料は? 法律事務所の解説では、本人の活動がない本当のライセンス料は比較的リスクが低いとされていますが、国が正式に認めたものではありません。大学に確認してください。
夏に日本に帰ったときのNILは? 活動そのものが日本で行われるなら、アメリカの就労制限の外とする解説があります。日本の税金と、学校・NIL Goのルールは別に確認が必要です。
NIL Goとは? D1の選手が、第三者からの合計600ドル以上のNIL契約を、契約から5営業日以内に報告するシステムです。
次の一手
NILに頼らず、競技と学位と費用が成り立つ大学を一緒に探したい方は、相談の申し込み から選手の情報と映像をお送りください。合格や奨学金を約束するものではありませんが、確認すべきことを一緒に整理します。

