結論から言うと、アメリカの大学を4年で卒業し、NCAAの出場資格が1年残っていれば、大学院(修士課程)に進んで5年目もプレーできる可能性があります。カギは4つです。①NCAAの5年間の期間の中にいるか、②大学院に合格し、毎学期の単位を取れるか、③F-1ビザの書類(新しいI-20)を間に合わせられるか、④大学院の学費を誰が払うか。この記事は2026年11月時点の一般的な情報整理であり、個別の法律・移民(ビザ)・税務のアドバイスではありません。出場資格は所属校のコンプライアンス担当に、ビザは大学のDSO(留学生担当)に必ず確認してください。
アメリカ大学サッカー留学全体の流れはアメリカ大学サッカー留学の全体ガイドにまとめています。この記事は、大学3〜4年生の選手と、「4年+1年」の費用を考えている保護者に向けて、大学院でプレーする5年目の選び方を整理します。大切なのは、有名な大学院に進むことではなく、選手の競技とキャリアに合っているかというFITです。
3行でわかる答え
まずはこの3点を押さえてください。
| # | ポイント | 根拠 |
|---|---|---|
| 1 | NCAA D1では、学士号を取った後も、5年間の期間の中で出場資格が残っていれば、大学院生としてプレーできる | NCAA D1 Bylaw 14.6、12.6 |
| 2 | 大学院生は多くの単位ルールの対象外だが、毎学期6単位以上を取る「6時間ルール」は残る | NCAA D1 Bylaw 14.6.4、14.4.3.6-(c) |
| 3 | 同じ大学で修士に進むならSEVISの「教育レベルの変更」で新しいI-20、別の大学ならSEVISの移管が必要 | Study in the States「Change Education Level」 |
なぜ今「5年目」が生まれるのか
NCAA D1・D2では、2026年8月から年齢ベースの出場資格ルールが始まりました。 5年間の出場資格期間は、「大学に初めてフルタイムで入学した学期」か「19歳の誕生日の後の学年の始まり」の早い方から始まり、試合に出なくても止まりません。以前の「4シーズンまで」の上限やレッドシャツの考え方はなくなり、2027年秋以降に初めて入学する選手には、この年齢ルールだけが使われます。
つまり、5年間の期間の中で4年で卒業すれば、5年目は大学院生として使える可能性があります。2027年秋に大学に入学する選手(19歳になる前に入学)の例は次のとおりです。
| 年 | 学年の例 | 学位 | 出場資格 |
|---|---|---|---|
| 2027-28 | 1年生 | 学士課程 | 1年目 |
| 2028-29 | 2年生 | 学士課程 | 2年目 |
| 2029-30 | 3年生 | 学士課程 | 3年目 |
| 2030-31 | 4年生(2031年春に卒業) | 学士課程 | 4年目 |
| 2031-32 | 大学院1年目 | 修士課程 | 5年目 |
これは例であり、入学時期や誕生日によって期間の始まりは変わります。5年間の数え方はNCAA Eligibility Centerの登録の記事でも解説しています。自分の期間がいつ終わるかは、3年生の秋までに所属校のコンプライアンス担当に書面で確認してください。
残るか、移るか:同じ大学の大学院か、別の大学院か
大学院でプレーする方法は、同じ大学で修士に進むか、別の大学の大学院に移る(グラデュエートトランスファー)かの2つです。 D1の規則では、学士号を取った学生は、大学院や2つ目の学士課程などにフルタイムで在籍し、5年間の期間の中で出場資格が残っていればプレーできます。別の大学から来る場合は、前の大学に残っていたら成績面で出場できたことも条件になります。
| 項目 | 同じ大学の大学院 | 別の大学の大学院 |
|---|---|---|
| コーチとの関係 | 続く。5年目の役割を相談しやすい | 新しいチームで一から信頼を作る |
| 学びたい修士があるか | その大学にある専攻に限られる | 専攻から大学を選べる |
| 奨学金 | 今のチームの予算次第 | 新しい大学の条件を比べられる |
| 転校の手続 | 不要 | NCAAの転校の通知(ポータル)が必要 |
| F-1の手続 | 教育レベルの変更(同じ大学で新しいI-20) | SEVISの移管(新しい大学がI-20を発行) |
別の大学院に移る場合、D1の規則では、サッカーなどフットボール以外の競技の大学院生は、10月1日から、その競技の転校の通知期間の最後(サッカーでは5月1〜15日の期間)の終わりまでの間に、転校の通知を始められます。学部生のように短い期間に限られないのが特徴です。ポータルの流れはトランスファーポータルの使い方を参考にしてください。
監督が交代した場合など、5年目の計画が変わることもあります。コーチの交代については、コーチ交代の記事も参考にしてください。
D2では、同じ大学の大学院と、別の大学の大学院への転校の両方が規則で認められ、5年間の期間の中で資格が残っていることが条件です。D3では、D3の大学を卒業した人は10学期(15クォーター)の範囲内で大学院でもプレーでき、D3以外の大学を卒業した人は「4年以内に卒業し、フルタイムの在籍が途切れていないこと」などの条件があります。NAIAは、大学院生向けの独自の条件(最初の学期の扱いや、その後のフルタイムの単位など)があるので、志望校に確認してください。
勉強面:4年で卒業することが前提
5年目を大学院で使うには、まず4年で学士号を取ることが前提です。 4年で卒業するには、毎年の単位を計画的に取る必要があります。シーズン中は授業を減らしたい選手も多いので、夏学期を使って単位を前倒しする方法があります。詳しくはアメリカ大学の夏学期:サッカー選手の単位戦略で解説しています。
次に、大学院に進みたい分野と、学部の専攻がつながっているかも大切です。学部でスポーツマネジメントを学び、修士でビジネスやデータ分析に進むなど、専攻の選び方で5年目の選択肢が変わります。学生アスリートの専攻の選び方も参考にしてください。
大学院の入試では、学部のGPA、推薦状、志望理由書が重視され、専攻によってはGREやGMATのスコアが求められます。出願の締切は4年生の秋〜冬が多いので、3年生のうちに準備を始めてください。
大学院生になると、D1の単位のルールは大きく変わります。 学部生には「毎学期6単位」「1年で18単位」「卒業に必要な単位の40%・60%・80%」などのルールがありますが、大学院生はこれらの対象外です。ただし、在籍する大学院のプログラムに必要な単位を、毎学期6単位以上取る「6時間ルール」は残ります。また、大学院生も、学校が決めたフルタイムの単位数に在籍していなければ、練習にも試合にも参加できません。
ビザ:新しいI-20を間に合わせる
同じ大学で学士から修士に進む場合、DSOがSEVISで「教育レベルの変更」を行い、新しいI-20を発行します。 Study in the Statesによると、この手続は学士課程の終了日の後の60日間(グレースピリオド)が終わる前に行う必要があり、新しいプログラムは前のプログラムを終えてから5か月以内に始まる必要があります。別の大学院に移る場合は、SEVISの記録を新しい大学に移す手続になります。
大学院生のフルタイムの単位数は、学部生の12単位とは違い、大学ごとに決められています(多くの大学で9単位前後)。F-1のフルタイムとNCAAのフルタイムの両方を満たす必要があるので、F-1のフルタイム在籍とシーズンも参考にしてください。
注意点があります。 アメリカ国土安全保障省は2026年7月、F-1の滞在期間を最長4年の固定にし、大学院生の転校や専攻の変更を制限する規則を公表しました。この規則は2026年9月15日に始まる予定でしたが、9月14日に連邦裁判所が施行を止め、2026年11月時点では従来のルールが続いています。裁判の結果によって変わる可能性があるため、「大学院の途中で別の大学に移る」といった計画は、必ずDSOに最新の状況を確認してください。
無料相談:4年+1年の設計を、入学前から一緒に考えます。出場資格・単位・費用を逆算します。NextPitchの無料相談はこちら。
お金:大学院の学費は誰が払うか
D1の規則では、5年間の期間の中で出場資格がある大学院生にも、大学はスポーツ奨学金を出すことができます。 奨学金の内容は、学費と大学の費用、住まいと食事、教科書などで、大学が決めた学費の実費をカバーできるとされています。ただし、大学院の学費は学部と違う場合があり、プログラムによって追加の費用がかかることもあるので、チームの予算でどこまで出るかをコーチに確認してください。
もう1つの方法が、GA(グラデュエートアシスタント)の仕事です。 GAは、大学の部署で働く代わりに、学費の免除や給料を受け取る仕組みです。たとえばUSC Upstate(サウスカロライナ大学アップステート校)のサッカーのGAの募集では、週20時間で月1,000ドル(10か月)、州外学費の免除(年約12,000〜16,000ドル相当)が条件で、州内学費(年約10,300〜14,000ドル)は本人の負担とされています。
ただし、GAは「選手として」ではなく「大学院生の仕事」として働くものです。プレーとGAを両立できるか、GAの学費免除がNCAAの奨学金の上限(大学が計算するCOA=就学にかかる費用)の計算にどう入るかは、大学の奨学金担当とコンプライアンス担当に確認してください。NCAAの規則では、大学が出す学費免除は大学の奨学金に含まれ、奨学金の合計はCOAを超えてはいけないとされています。
F-1の学生は、学期中の学内の仕事は原則として週20時間までです。奨学金やアシスタントシップの条件として行う学内の仕事は、学業の一部として扱われます。
このほか、大学院向けの成績による奨学金や、日本の財団の大学院向け奨学金も選択肢になります。日本の給付型奨学金の併用の考え方は、JASSOの奨学金の記事で解説しています。奨学金が学費を超えると税金の対象になる場合があるので、アメリカの税金の記事もあわせて読んでください。
キャリア:修士とOPT
F-1の学生は、学位のレベルごとに最長12か月のOPT(卒業後の就労)を使える可能性があります。 規則では、学士で12か月、より高いレベル(修士)に進むと、さらに12か月の資格が得られるとされています。学士の後すぐに修士に進む場合は、学士のOPTを使わずに修士の後にOPTを使う、という計画も考えられます。
日本で就職したい選手は、ボストンキャリアフォーラムなどの日程と、5年目のシーズンの日程が重ならないかも確認してください。OPTとCPTの全体像はOPT・CPTのキャリアマップで解説しています。STEM分野の延長は条件が細かいので、DSOに確認してください。
学年ごとのチェックリスト
5年目を大学院で使うための準備を、学年ごとにまとめます。
- 1年生:専攻と、つながる修士の分野を考え始める。5年間の期間がいつ始まったかを確認する
- 2〜3年生:夏学期も使って単位を前倒しする。GPAを高く保つ
- 3年生の秋:コーチに5年目の希望を伝え、コンプライアンスに出場資格を書面で確認する
- 4年生の秋:大学院とGAに出願する。転校するならポータルの時期を確認する
- 4年生の春:DSOに新しいI-20を依頼する。奨学金の条件を書面で受け取る
よくある質問
Q. 日本の大学を卒業してから、アメリカの大学院でプレーできますか? A. 規則上は、5年間の期間の中で出場資格が残っていれば可能性があります。ただし、日本の大学に入学した時点で期間が始まっているため、多くの場合は残りの期間が短くなります。海外の学位の扱いも含めて、NCAAと志望校に確認してください。日本の大学からの編入の記事も参考になります。
Q. D3の大学院でもプレーできますか? A. D3にも大学院生のルールがあります。D3以外の大学を卒業した人は、4年以内の卒業や、フルタイムの在籍が途切れていないことなどの条件があります。
Q. 修士の2年目もプレーできますか? A. 5年間の期間の中であれば可能性がありますが、4年で卒業した場合、5年目が終わると期間も終わるのが一般的です。修士の2年目は勉強に集中する計画にしておくと安心です。
Q. GAとプレーは両立できますか? A. 大学や部署によって違います。週20時間の仕事と練習・遠征が重なるので、コーチとGAの担当者の両方に確認してください。
まとめ
- 4年で卒業し、5年間の期間が残っていれば、大学院で5年目をプレーできる可能性がある。
- 同じ大学の大学院か、別の大学院か。転校するならD1では10月1日〜5月15日ごろに通知を始められる。
- 大学院生はD1の多くの単位ルールの対象外だが、毎学期6単位の「6時間ルール」は残る。
- F-1は教育レベルの変更か、SEVISの移管で新しいI-20を受け取る。規則の変更の動きにも注意する。
- 学費はスポーツ奨学金、GA、成績による奨学金の組み合わせ。COAの上限はコンプライアンスに確認する。
- 修士の後にもOPTを使える可能性がある。
無料相談:4年+1年の設計を、入学前から一緒に考えます。出場資格・単位・費用を逆算します。NextPitchの無料相談はこちら。
出典(2026年11月時点で確認):NCAA Division I Manual 2026-27(Bylaw 12.6、13.1.1.4.2、14.4.3.6、14.6、15.1、15.02.4.2、15.2.1、15.3.1)、NCAA Division II Manual 2026-27(Bylaw 14.2.4)、NCAA「2026-27 Division III Summary of NCAA Regulations」、NAIA Interpretations「Eligibility Requirements for Post-Baccalaureate Students」、Study in the States「Change Education Level」、8 CFR 214.2(f)、University of Wisconsin–Madison International Student Services「New Duration of Status Rule」、USC Upstate「Graduate Assistant for the Development Soccer Program」。

